収入の何%を貯蓄すれば安心? これが「人生設計の基本公式」だ! お金の運用で最も大事なこと

 

「現役」と「老後」のバランス

 以下は、筆者が「人生設計の基本公式」と呼んでいるもので、今後の現役時代の稼ぎ(手取り年収)を一定として想定したときに、現役時代の収入の何パーセントを貯蓄することが必要かを計算するものだ。

 例えば、大学を卒業して企業に就職したこれから23歳になるサラリーマンが65歳の誕生日に定年を迎えるまで42年「現役」で働いて、65歳から95歳になるまでの30年間、年金と蓄えの取り崩しで生きていくとしよう。

 「年金」を現役時代の手取り所得の3割として(厚労省が目指す「所得代替率5割」をアテにするのは現実的でない)、「老後生活比率」を現役時代の0.7倍、0.6倍、0.5倍、とすると、それぞれ19.0%、15.0%、10.5%を貯蓄しなければならない計算だ。

 知り合いのFPに聞くと、老後の生活費は現役時代の7割くらいが目処だという。新入社員諸君は、「手取り所得の2割貯められれば、老後の生活に心配はない」、「1割貯められないようだと、老後の生活は現役時代の半分未満になる」と認識されたい。将来大いに稼ぐ人も、それほど稼がない人も、現役生活に対してそれなりのバランスの老後が待っている計算だ。

 大まかではあっても、計算ができていて、必要貯蓄率が確保できていれば、「老後貧乏」だの「老後難民」だのといった世間の「脅し」を恐れる必要はない。

 読者は、今後の想定される平均年収(手取り)と、老後にあって現役時代の何倍の生活をしたいか「老後生活費率」を想定し、先の公式で必要貯蓄率を計算してみて欲しい。

 老後生活費率、現役年数(これを延ばすと、老後年数が縮む)を変えて、達成可能な「必要貯蓄率」に辿り着いたら、大まかな経済的人生設計が完了する。

可能貯蓄率から逆算する

 さて、35歳で、手取り年収が600万円、資産が2,000万円あるサラリーマンがいて、彼は老後にあって「現役時代の7掛けの生活」を望んでいるとする。定年を65歳、老後を30年として必要貯蓄率を計算してみよう。

 将来受け取る年金額は年間180万円と仮定する。収入は今後少し増えるだろうが、将来は役職定年等で55歳くらいから減り始めるし、60歳以降は大きくレベルダウンするので、35歳の現状の収入を将来レベルとして考えることにした。

 現在、彼は、手取り収入の17%を貯蓄できれば、希望するレベルで老後の生活を送ることができる。年間102万円、ひと月当たりに均すと、50万円の手取り収入から、8万5千円貯蓄すればよい。毎月41万5千円で暮らして、老後には毎月約29万円で暮らす計算になる。

 彼は、どこまで貯蓄率を上げることができるだろうか。「20%が限界だ」と考えたとしよう。

 彼が今よりも3%余計に貯蓄できると、現役期間30年で540万円余計に資産を作ることができる。この額が、運用で損をしてもカバーできる額の限界だ。

 つまり、彼の場合、運用での損が540万円までなら、これを貯蓄率を20%まで上げることでカバーできる。「運用の損の上限」を先のように35%と仮定して逆算すると、約1,542万円がリスク資産に投資できる限界だ。

 例えば、子供の学費が予定よりも500万円余計に掛かる、といった事態が起こった場合、リスクを取る余裕がほとんどなくなることが分かる。

 こうした場合、投資でリスクを取る余裕を作るためには、老後の生活レベルを落とすなど、前提条件を変えて、人生設計をやり直す必要が生じる。