主婦が起業、副業で翻訳出版…「朝活」で人生が変わる!?

 

一日のスタート、朝の時間をムダにしていませんか。早起きして体と脳を動かし始めると、日中の活動もスムーズに進みます。朝は気分爽快で、邪魔が入らない自分の時間。朝を生かす人の声に耳を傾けると……。

「朝活で、人生が変わりました」と話すのは、東京都内在住の50代主婦、青木美智子さん。

 約6年前、通っていた速読教室の講師に紹介されて朝の読書会に参加して以来、魅力に目覚めた。

 さまざまな朝活イベントに顔を出すようになり、3年前には好きな本を紹介し合う朝の読書会を自ら始めた。青木さんは言う。

「専業主婦は、人脈が狭くなりがちです。人の紹介やSNSを通じ、10~70代のさまざまなバックグラウンドの人が参加してくれます。普段接する機会のない人と話せ、自分では選ばない本の話を聞けるのも、刺激的です」

 本の紹介という「ネタ」があるので、話題を探す必要がない。気後れせずに話せるのもメリットだ。

 青木さんは朝活を通じ、「イベントスペースのある古本屋を開きたい」との夢を抱くようになった。10月、理想の物件に出合って契約。今は夢の実現に向け、開業準備を進めている。

 夫の高夫さん(60)も一足早く、朝活で自分を変えていた。自動車メーカー勤務の会社員だが、朝の時間を生かし、翻訳家・ビジネス書作家として活躍する「違う顔」を持つ。

 30代のころ、仕事に役立てようと得意の英語を生かして読んだ海外のビジネス書に感銘を受けた。「多くの人に紹介したい」。そう思って、出版社に翻訳出版を提案。以来、翻訳や執筆を始め、朝7~9時に作業している。遅めに出社できるフレックス勤務をフル活用し、机に向かう。

「会社に行けば、山積みの仕事の片づけで終わり、将来の自分に投資する余裕がない。朝はだれにも邪魔されず、じっくりアイデアを練るなど、集中できる。執筆だけでなく、本業の企画書づくりもしています」

 10月には15冊目の訳・著書『仕事に追われない仕事術』(マーク・フォースター著)を上梓した。朝時間を生かし、訳書を地で行く時間管理をしている。

 

図解コンサルタント、池田千恵さんも「朝活で劇的に人生が変わった」。

 2度の大学受験失敗を機に早起きに目覚め、半年の早朝勉強で慶応大に入学。外資系企業などを経て、2015年に朝型勤務のコンサルティング会社を設立した。その名も「朝6時」。

「いつもより早起きできたら、ちょっとうれしいですよね。これも立派な成功体験。小さな達成感を毎日積み重ねると自信になり、チャレンジ精神も芽生えます」

 池田さんの考える朝時間のメリットは、大きく二つある。一つは精神的、時間的な余裕。早く一日が始まり、段取りを考え、自分の時間を持てる。もう一つは、前向きになれることという。

「朝は幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの分泌が盛んになり、おだやかで生産的な気持ちになれます。仕事で失敗すると、夜は落ち込みますが、朝にクヨクヨするのは意外と難しい。『会社を辞めてやる』とふて寝しても、朝になったら『上司の言うことも一理ある』と思えるものです」

 家事と仕事の両立にも、朝の時間をいかに使うかが重要になる。

 5、3、1歳の3児を育てつつ、フルタイムで働くブロガー、りか子さん(30代)。3年前から、夜9時半に寝て、早朝4時に起きる日々を送っている。

「以前は睡眠時間を削って家事や育児をしていたのに、どれも中途半端でした。夜は子どもと早く寝て、家事を朝にまわしたら、スムーズにこなせ、自分の時間も持てるようになりました」

 4時に起きると、まずコーヒーをいれる。お菓子を楽しみながら読書したり、パックなど時間のかかるスキンケアをしたり、自分の時間を過ごす。

 5時からは家事の時間。洗濯、夕飯の下ごしらえ、掃除、朝食の用意と手際よくこなす。モットーは、頑張りすぎないこと。掃除は片づけ程度にし、朝食は納豆や残り物などで簡単にすませる。

 6時になると、子どもを起こして食事や登園の支度。7時45分に家を出て保育園に送り、出勤する。

 

「肌の調子が良くなり、『3人も子どもがいるように見えない』と言われることが増えました。何より、心に余裕ができ、子どもにイライラしなくなったのがうれしい」(りか子さん)

 よいことずくめに見える朝時間。ただ、「パテカトルの万脳薬」を本誌で連載中の脳研究者、池谷裕二・東大教授はこう指摘する。

「朝は仕事がはかどると感じる人はそれでいいのですが、脳は必ずしも朝に最大のパフォーマンスを発揮する仕組みになっているわけではありません」

 朝の時間は、主に家事などの単純作業や運動、読書など受動的な行動が向いている。趣味の時間にするのも良いという。

「昼や夜と比べて朝は脳が処理できる仕事量が少ないので、体を動かしながら覚醒させるのが合理的。それでも、夜にした仕事を朝にチェックするのは理にかなっています。寝る前にインプットした情報は寝ている間に記憶に定着し、整理されるからです」

 これからの時期、朝は寒くて暗く、早起きがつらそうだ。どうすれば、決めた時間にすっきり起きられるだろうか。

 4時起き主婦、りか子さんはベッドで目薬をさし、目をシャキッとさせる。その後、枕元に用意した暖かい靴下と羽織りものを身につけ、ベッドを出る。

「朝6時」社長の池田さんは「タイマーで暖房がつくようにしておく。寝坊すると無駄になるので、それがプレッシャーになります。起きてから食べるお菓子など、ごほうびを用意しても」と話す。

 一方で、池谷教授は「起きる時間は休日も含めて毎日同じ時間に。休日の遅起きは自分で時差ぼけ状態をつくるようなもので、脳の働きに悪影響を与えます。疲れがたまっているならば昼寝を」とアドバイスする。

※週刊朝日 2016年11月18日号