○生活費について


老後の1カ月あたりの生活費と準備しておきたい貯蓄額、平均は?

金融広報中央委員会が毎年実施している「家計の金融行動に関する世論調査(平成26年)」で、老後の生活費や貯蓄に関して、アンケートによる全世代(20代~70歳以上)の平均額の回答が公表されています。


●老後のひと月当たり最低予想生活費 26万円

●年金支給時に最低準備しておく貯蓄残高 2144万円


世帯別では、60歳代と70歳以上の方の回答の平均は、いずれも全年齢回答平均より1万円多い27万円でした。実感がこもった金額のようにも感じられます。


モデル世帯の年金額は平均22万1507万円

一方、厚生労働省が毎年発表している、モデル世帯における夫婦二人の年金額の平成27年度の金額は1カ月当たり22万1507円です。皆さんが想定している最低生活費を年金だけで生活費を賄うのは厳しそうです。


皆さんが老後に望む生活水準は?

老後の生活費

アクティブで経済的にも豊かなシニアライフを送るためには、いくら必要? 皆さんは老後のひと月当たりの生活費として、いくら使うか、いくら使いたいか考えてみたことありますか? 金額で何万円という額は頭に浮かばないかもしれませんね。


イメージしやすくするには、現在の生活水準を維持したいか、支出を下げて我慢するか、今よりゆとり生活を送りたいかと考えてみるとよいですよ。


現在、生活費25万円でやりくりしている家計の場合、次のように考えると大まかな老後の生活水準がイメージできます。


・現状維持:老後資金も25万円使いたいということになります。

・ガマンする:20万円前後か、それ以下の生活費になるかもしれません。

・ゆとりある生活を望む:現状の生活費25万円にプラス5万円か10万円、それ以上を上乗せした生活水準です。

 

出典: All about

 

 


<収支の見通しを立ててみる>

ポイント1

≪定年後の生活を描いてみましょう≫

・ 何歳まで働くか

・ 定年時、妻は何歳か

・ 現在の生活水準を維持したいか

 

ポイント2

≪生活費を試算してみましょう≫

・ 定年後、何歳まで生きると想定するか

・ 自分が死亡後、妻は何年生きる?

・ 定年時に住宅ローンは完済?

・ 現在の毎月の生活費

・ 定年後の住居費

 

ポイント3

≪定年後の出来事、リスクを想定してみましょう≫

・ 子供の結婚式(援助)にかかる費用

・ 夫婦で海外旅行の計画は?

・ 住宅のメンテナンス費用

・ 車の買い替えの予定?

・ 家族の病気・怪我・災害など万一のリスク

 

ポイント4

≪収入を把握しましょう≫

・ 公的年金の受取額はいくらになるか

・ 企業年金(退職金)はいくらになるか

・ 生命保険にはいっているか

・ 定年後、再就職した場合の収入

 

ポイント5

≪自分の純資産を把握しましょう≫ (バランスシートの活用)


≪資産≫

現金・預貯金・ゴルフ会員権・リゾート会員権 ・株式・債券・投資信託など・積立型保険・財形など


≪負債≫

住宅ローン・車その他のローン


≪純資産≫

車・自宅


ポイント6

≪親からの資産相続にも注意しよう≫

・遺言状を頼めるのならお願いしたいところ

・親の介護が必要ならその費用負担もでてくる



出典: アクティブシニアのための生き生きセカンドライフのすすめ




必要資金総額1億5,000万円!

・退職後の生活水準は、現役最後の頃の生活水準に大きく規定される。

・そのため、現役最後の年収との対比(これを欧米では Target Replacement Rates、目標代替率と呼ぶ)で退職後の生活費を考える。日本の場合には、68%を退職後の年間の必要総額として想定する。

・年間の必要総額は年齢を重ねても減らないと考える。

・退職直前の年収を平成24(2012)年の「民間給与実態統計調査」(国税庁)における50代後半男性の平均給与618万円と仮定する。

・退職後の生活を60歳から95歳までの35年間と想定する。


これらをもとに、退職後の必要総額が計算できることになります。具体的に計算してみると、退職後の必要資金総額は1億4,708万円(=618万円×68%×35年間)。かなり大きな金額になって、ちょっと目を回しそうな感じです。少なくとも普段の生活の中で1億円を超える金額を身近に感じることはありませんから、今ひとつその大きさが実感できませんよね。


でも、これが現実なのです。


もちろん、これをすべて自分で用意する必要はありません。心配だとはいっても、ある程度公的年金がカバーしてくれるはずです。今度はそれを計算してみましょう。同じく計算の前提ですが、


・サラリーマンを想定して、厚生年金の受給額を平成26(2014)年度の標準世帯の年金額22万6,925円を参考に、月額23万円と想定する。

・65歳支給開始として、95歳までの30年間をこの金額で受け取れることと想定する。


これで年金受給総額は、8,280万円(=23万円×12ヵ月×30年間)となります。もちろん、これまでみてきたとおり、この金額がこれからもずっと受け取れると考えるのはあまりにも楽観的に思えますが、ここではまず、この想定を前提にしてみます。


必要総額と年金受給総額の差額が自分で用意しなければならない金額、すなわち自助努力の金額ということになりますが、その金額は6,428万円。アンケートの平均金額3,000万円弱の2倍以上が、自助努力で必要という計算になりました。


将来の年金受給額の減少が怖い


自助努力で用意する資金6,428万円。果たして、ここまで必要でしょうか。数字で遊ぶつもりはありませんが、退職後に退職直前年収の68%も必要としない生活ができるのであれば、自助努力の総額はもっと少なくて済みます。たとえば、68%ではなくて60%ならその金額は1億2,978万円で、年金の分を差し引いた自助努力の金額は4,698万円に下がります。もし、多くのサラリーマンが期待しているように50%の生活費で生活できるのであれば、総額は1億815万円で、自助努力は2,535万円で済みます。


このあたりまで下がれば、中には退職金だけでなんとかカバーできるという人も出てくるかもしれません。でもその一方で、年金受給額が現状どおりに続かないと考えると、今度は必要額が増えることになります。たとえば、月額23万円が20万円まで減ったと仮定すれば、年金受給総額は7,200万円で、68%の必要額だとすると7,508万円が必要になります。


たいへんな金額になりました。たとえ50%の生活費だとしても、3,615万円の自助努力が必要になります。


その年金額で本当に暮らせるか?

ところで、納付者を特定できない公的年金の納付記録が5000万件以上あったことが発覚し、「消えた年金」で大騒ぎとなった2007年当時、何度か不思議に思ったことがあります。それは、年金が2つの側面でしか語られておらず、最も肝心なところを避けているように思えてならない、ということでした。


「消えた年金」はまさしく手続きの問題で、結果として大きな影響を与えることになりますが、何はともあれ、手続きをしっかりすべきということでした。もう一方の議論は、年金財源の問題で、税金から一部負担するのか、消費税を財源にするのかといったものでした。


でも一番肝心なことは、「その年金で私たちが老後を暮らしていけるかどうか」ではないかと思います。「100年安心」は、制度が続くから「安心」なのではなくて、それで生活ができるから「安心」でなければならないはずです。どうもその肝心なところが議論から抜け落ちていたように思います。というよりは、もしかすると、生活できるかどうかという点で「安心」を謳うことができないから、あえて議論を避けていたのかもしれません。


いずれにしても多くの国民は、老後の生活費を年金で賄いきれるとは信じていないはずです。


さらにいえば、政府はここでこそ「将来の年金はみなさんの老後の生活を十分にカバーできません。そのため自分で準備することを忘れないでください」と発表する必要があると思いませんか? 米国でも、英国でも、そういった政府のある意味で正直な現状認識が、国民の資産形成を後押ししているのではないかと思えてなりません。


なんとなく知っているのではなく、明確に知らされていることが、国民が「事」を始める大きなきっかけになるものです。それが現在の若い人たちにとって本当にためになることだと思います。



老後難民予備軍、4割に達す


さて、老後に必要な金額に関して、アンケートの結果、必要額の算定など考え方を紹介してきました。実際には、勤労者はどれくらい老後資金を準備しているのでしょうか。これも2014年4月に実施した勤労者3万人アンケートを参考にみていきましょう(図表4)。同じ設問で2010年にもアンケートを実施しており、その内容は前著『老後難民 50代夫婦の生き残り術』にまとめていますので、これと比較してみていただくのもいいかと思います。


2014年における勤労者3万人アンケートでは、退職準備額の平均値は598.7万円でした。2010年の515.6万円と比べて大幅に増えているものの、依然として必要額と比較すると、その2割くらいにとどまっています。とても満足のいく水準ではありません。


しかし、それ以上に衝撃的なのは、グラフにあるとおり、44.8%の勤労者が退職後の準備資金が「0円」と回答していることです。2010年の時も4割が0円と回答していましたから、このままいけば、老後難民になりかねない予備軍がかなりの比率を占めることになります。


なかでも心配なのが、50代の老後難民予備軍の人たちです。50代男性の勤労者の32.1%が老後資金0円と回答しています。老後のための資産形成にそれほど時間が残されていない50代のうちの3割が、公的年金だけで老後に突き進もうとしているのはとても心配です。


★老後資金のない50代は3割

いったい、50代で老後資産0円という人たちはどういった人たちなのでしょうか。詳細な分析は、その前年2013年4月のサラリーマン1万人アンケートで行っていますので、そこから紹介しましょう。アンケートに回答してくださった50代のサラリーマン(実際には公務員も含みます)3112人を、「老後のために現在保有している資産額」の大きさ別にグループ化しました。退職後の準備資金が0円だと回答した人は831人(26.7%)。500万円未満が836人、500万円以上2,000万円未満が959人、2,000万円以上が486人で、それぞれ同じ項目でクロス分析を行ってみました。


「老後難民予備軍」の特徴を、言葉をつなぎながらまとめてみることにしましょう。


「年収が500万円未満」の方が多く、退職後の生活は、「生活費不足」を心配して「ほそぼそ・質素」や「つらく・不安」なイメージを持っています。定年後の楽しみは「働くこと」で、できれば「70歳くらいまで」働き続けたいと考えています。


公的年金に関して「あまり理解できておらず」、そのためか公的年金に対して過度に「不安だ」と思っています。年金以外に退職後に必要となる生活費の総額は「必要ない」とか、「2,000万円未満」で済むと考えているのですが、その背景には、退職したら生活費は退職前の「半分に満たない水準」で大丈夫だと考えていることがあり、かなり楽観的な感じがします。


2,000万円の資金を準備するためには「退職金や企業年金の充実」が必要と考えており、また「遺産」がないかと期待している姿も見受けられます。その一方で、自身での資産形成の対応策としては「何もしておらず」、「投資はギャンブル、損失、怖い」とのイメージが強く、もちろん「投資をしていません」。その結果、2,000万円未満の金額でも退職後に必要な資金は「準備できない」との懸念は強いようです。


こう読んでいくと、かなりネガティブな連鎖が強く感じられるのは私だけでしょうか。


節約では追いつかない

ところで20代、30代のサラリーマンなら、退職後のための資産が0円というのはそれほど心配する必要はないと思います。今から準備を始めても、資産運用で最も力になるといわれる「時間」を味方につけることができますから。いや、20代で老後の生活のための資産がすでに何百万円もあるというのも、ある意味で心配ですから、これから少しずつ始めるというのが最もいいパターンなのでしょう。


「資産運用を検討すべきだということはわかっていても、その資金をどうやって捻出すればいいのか」と思う人も多いのではないでしょうか。そして、「まずは節約から始めるか!」と心に決める人も多いかもしれませんね。


でも私は、個人的には節約は大嫌いです。そもそも節約でどれくらいのお金が作り出せるのかわからないし、節約で楽しい生活が送れるとも思えません。


節約は、ほんの少し頑張っているうちなら楽しいでしょうが、資産形成の原資となるほどの金額を捻出することを念頭に置くと、簡単ではないと思います。それはかなり苦しいのでは? 「収入があるのに使えない」状態だから、特に苦しいと思います。そして結局、「できる範囲で」という条件は「できなければ少なくてもいい」という理由づけにもなってしまいます。


出典: 現代ビジネス