○地方に移住


田舎暮らしを楽しむ 

田舎暮らしの理想と現実を見きわめよう

満員の通勤電車に揺られる生活から抜け出し、日本の片田舎で静かに余生を送りたいというシニアが増えているようです。大自然の中で野菜作りや釣り、散策など、田舎暮らしは都会では味わえない楽しみを得ることが可能となる反面、交通、買物など生活の不便さを覚悟しなければなりません。また地元にとけ込む努力も必要となります。

 

■ まずは何をしたいかのイメージを固める

漠然と「のんびり田舎で暮らしたい」と考えるだけでは、どの地域に居住先を決める

かで迷いが生じてきます。山登り、陶芸、釣り、ゴルフ、農作業などやりたいことが

はっきりイメージできれば移転先も決め易くなります。

 

■ 地域を決める

別々の地域の価格を比べて安い物件を探すのではなく、住みたい場所をある程度決めてから探すことが大切です 

人気のリゾート地でなければ、多くの田舎では過疎が進んでいるため、都会から

の移転は歓迎しているところが多くあります。居住用の土地や建物を無料または

格安で提供したり、移住者に奨励金を支給する自治体もあります。


■ 農作業は思った以上の重労働

若い頃からずっと農業に取り組んで鍛えられた人でも年齢と共にしんどさを増す仕事を、それまでサラリーマンだった人が60歳を過ぎた初心者として始めるわけですか、若い世代が農業に参入するのとその大変さは比べものにならないほど体力や根気を要するもののようです。

まして利益をあげる目的で農業を始めるのはそう簡単なことではないといわれます。

軌道に乗せるまで頑張らなくては続けられない仕事であること。逆に頑張りすぎて体を壊しては続けられなくなるという現実にバランスよく対処していくことが必要になります。

新しく始める農業ですぐに十分な収入を得るのは難しく、当面の生活費がない人は生活に行き詰まることになります。

多くの人が共通して言うのが雑草との闘いです。雑草の茂るスピードは想像を絶するほど早いといわれ、その作業を続けると若い人でも足腰が痛くなるそうです。

まして60歳過ぎの慣れない人がやると腰を痛めてしまう危険性もあり、結局除草剤を使うかプロに任せるかでいずれにしても余分な費用がかかることになります。


■ 田舎暮らしに向いている人、向いていない人

田舎暮らしに対する憧れと現実のギャップは、人それぞれ受け止め方が違います。

ちょっと旅の途中で立ち寄って、こんな自然の豊かなところに住めたらいいなあと思っても、実際に住んでみると想像以上の大変さがあるのに気付かされたりします。

その大変さが耐えられないぐらいのレベルに感じる人は田舎暮らしに向いていない人といえます。

 

また田舎を持たないIターン組に特にいえることですが、いかに地元の人と良好な人間関係を築けるかが重要になります。田舎では近所付きあいが濃密で、祭りや葬儀などの冠婚葬祭、雪かき作業など共同参加で実施するイベントが多いものです。

 

そのため近所付き合いは欠かせず、人付き合いが煩わしいと思う人は田舎暮らしには向いていません。


■ 経済的な余裕がなければ苦しい

田舎は基本的には都会と比較して物価は安くなります。しかし収入を得る事に関してほとんど困難であると思っていたほうがいいと思います。高齢者が田舎で就職先を見つけるのはきわめて難しいのが現実です。


出典: 生き生きセカンドライフのすすめ




定年後に国内移住し田舎へ暮らしたいという時に考えるべき3つの問題

最近は定年退職後に国内移住をして田舎でゆっくりと暮らしたいという方が増えています。

都会の喧騒から離れた癒しの生活は、ある意味最も「贅沢」なライフスタイルなのかも知れません。

田舎暮らしのハウツー雑誌やテレビ番組などでも目にすることが多くなっていますが、

慣れない田舎での生活は都会の常識が通用しない部分もありますので、退職前からできるだけ知識をつけ準備しておくことが大切です。


○国内移住先の田舎

1.現金収入の問題を考える

自分の余生を十分に送る事ができるほどの貯蓄がある方なら問題ありませんが、国内移住をした先の田舎は現金収入を得る事が非常に難しい環境です。

多くの地方出身者が都会に職を求めて上京することを考えてもらえば当然理解できることです。

農作物を育ててもそれを現金化することは非常に難しいと考えたほうがよいです。

農家であっても、それぞれが勝手に作って勝手に売っているわけでは無く、きちんとした販売ルートが決まっており、組合も存在します。

田舎は物価が安いと思われがちですが、それは土地代などが安いだけで、光熱費などは都会よりもはるかに高く「共益金」のような出費も多く必要になります。

家を確保すると同時に、何等かの形で現金を得る方法を考えなくてはなりません。


2.病院の設備が都会よりも劣っている可能性がある

田舎の病院は設備の点で都会の病院に劣る場合があります。

都会に暮らしていると無意識に日本の最新医療を受けていますが、移住する田舎の場合ではそういった設備や専門科が無い事もあるのです。

自分の暮らすすぐ近くにそういった病院が無い場合は最も近い県庁所在地などで病院を調べておく必要もあります。

体の事ですので、最悪の事態を想定しておきましょう。

景色もよく、最も都会とのギャップが感じられるような「最高の田舎暮らしの舞台」となればなるほどライフラインの整備が不十分な傾向にあるのです。


3.地域との関係性が大切

都会と違い村や小さな集落などは人間関係の密着性が非常に高いという事を知っておきましょう。

個人主義が通用しない世界であり、文字通り近所が「助け合って」生活しています。

地域の「決まり事」は絶対であり、行事事なども非常に重要な意味を持ち大切にされています。

村長などリーダーを中心に統制がしっかり取らていますし「消防団」や「農業組合」は税金を払ったらやってくれるといった感覚では通用しません。

都会の町内会などとは次元が違う世界なのです。

そこに「窮屈さ」を感じる人もいるようで、その辺りのメンタルな部分での認識と覚悟は非常に重要です。

また村によっては外部からの移住をよく思わない場所もありますので、不動産業者だけに頼らずに自ら足を運び村の代表とコミュニケーションを取ってから引っ越しを決めるかどうか判断すべきです。


国内移住のメリット、デメリットをしっかり考えてから行動を

田舎暮らしの不便さとデメリットばかりを並べてしまいましたが、これらは全て実際に起きうることなのです。

田舎というのは都会よりも「過酷」な生活環境であることは事実です。

しかしそれらをクリアした先に人間らしい癒しの空間がある事も事実です。

スーパーでは購入できないような贅沢な農作物や自然が無償で与えてくれる様々な恩恵は、金品と対価することができなほど貴重な恵みです。

テレビなどのメディアなどでは良い部分だけをクローズアップして情報を提供している傾向があります。

軽い気持ちで国内移住をして田舎暮らしをスタートさせたものの、前述の理由などでまた都会に戻ってくる方達が多い事はあまり知られていません。

せっかくの「夢の田舎暮らし」を失敗に終わらせることが無いように、綿密な事前調査と計画性で諸問題をクリアし、素晴らしい田舎暮らしが満喫できるように準備を始めましょう。

定年後の生活, 移住 2014/10/25


出典: ロクエン




田舎暮らしを成功させるには

田舎暮らしを成立させるには、生活場所と生活手段の確保という二大条件があります。言い換えれば田舎物件の購入と収入になりますが、要は経済的な裏付けが必要なのです。まず田舎物件について言えば、土地代500万円+建築費1000万円=1500万円が普通に田舎暮らしができる最低線(平均的には2000万円台)。しかも、田舎の土地は資産価値が低いので、現金で買わなければならないケースがほとんどです。中古を買ったり、セルフビルドで予算を下げることはできますが、一部の人が考えている500万円の総予算などは絵空事です。また、賃貸の空家を望む人も少なくありませんが、①家賃が年10~40万円程度なので業者が仲介する対象になりにくい、②持ち主もその程度の収入で地域にもめ事を起こされては割に合わない、という理由などでめったに出てきません。

 住宅以上に重要なのが、生活費の問題です。ここ数年の田舎暮らしの傾向として、不況を理由に田舎をめざす人が増えました。都会はダメでも地方なら何とかなるだろう、自営業なら食べていけるだろう、工場勤めの仕事くらいはあるだろう、という考え方です。しかし、そういう考え方が通用するか否かは、冷静に考えればすぐにわかることです。

 山村で過疎化が進行したのは、農林生産物の価格低迷に加えて、条件のいい仕事が不足しているため。地元の若者は高校を卒業すると、大半が都会へ出ていきます。郷里に残ったのは役場や郵便局、農協など公的機関に就職できた一部の長男長女のみ、というのが過疎村の現実。そこへ都会人がやってきて、充分な収入を得られると考えるほうがおかしいのです。農村にも小さな工場はありますが、最近は不況の影響が深刻になっています。過疎地では土木建築業が唯一の地場産業であり、それすら公共事業の圧縮で大幅に減少してきました。都会人はその厳しい現実を頭に入れておくべきです。

 年金生活者は別にして、過疎地に移り住む都会人は仕事があれば何でもやるくらいの心構えが必要です。田舎では職探しも人脈が頼りなので、役場やご近所に相談してみましょう。また、最近は農村部でも人材派遣に伴う部品製造などの求人チラシが入るようになりました。45歳くらいまでの募集が主流ですが、こうした情報にも注意を払いたいものです。一口に田舎暮らしといっても、さまざまなライフスタイルがあります。田舎暮らしをめざす人の指針として、ここでおもなものを挙げておきます。


定年後に土いじりを楽しむ都会人が増えた

●定年後の田舎暮らし派・・・・すでに田舎暮らしを始めた人は、貯蓄や年金という裏付けを持った50~60代の中高年が7割以上です。定年後を田舎で暮らす意義は、空気のいい場所で体を動かせること、家庭菜園や釣りなどの趣味を生かせること、地域社会の役に立つことで生きがいを持てること、などが挙げられます。近年は50代半ばの早期退職組も増えてきました。年金受給開始までの収入確保という課題はありますが、田舎暮らしの敷地を整えたり、地域社会に慣れるには時間がかかるので、その観点からは好ましい現象です。早期退職制度がある会社のサラリーマンは、前向きにこの制度を活用すべきです。移住に必要な資金は、年間200万円の生活費×年金開始までの年数+住宅費が最低ラインでしょう。このライフスタイルの最大のネックは、家族の説得です。夫が強引に移住を決めたり、子どもに相談しないで行動すると、のちのち問題が起きやすいのです。妻がノイローゼになったり、子どもに呼び戻されるケースがかなり見受けられます。説得の成功例としては、田舎暮らしの専門誌を持ち帰ってさり気なく読ませたり、「都会に住む子どもに田舎を創ってやろう」「健康的な生活をするには田舎がいい」と粘り強く会話を続けてきた人たちがいます。たまに夫が単独で移住するケースも見かけますが、夫婦関係の維持が難しいのであまりお勧めできません。このライフスタイルの変形として、月に十日くらい長期滞在したり、春から秋にかけて半定住する人もいます。別荘生活との違いは暮らしの一部になっていることで、多くが家庭菜園などを楽しんでいます。また、地域住民とふれあうことで生活の知恵を学ぶこともできます。


●新規就農派・・・・近年、マスコミが流行らせた造語に「定年帰農」があります。定年になったら農とふれあう生活をしなさいという意味ですが、帰農は農家になるという意味もあるので、定年になったら農家になればいいと単純に考える人が増えました。農業も自営業の一種なので、経営者としての自覚が求められるのですが、実際は市民農園の延長くらいに考えている人が多いのです。しかし、農業経営の現実は甘くありません。新規就農者なら年収100万円、200万円がざらという世界です。貯蓄が少ないから農業でも、という考えは捨てるべきです。また、最低限の技術習得も必要。未経験者は農業大学校や就農準備校に通う、農業研修制度を利用する、といったプロセスを踏むべきでしょう。新規就農者の農業技術の習得については、以下のHPが参考になります。

http://www.ryeda.or.jp/junbiko/index.html

http://www.nca.or.jp/Be-farmer/


●モノづくり派・・・・田舎で陶芸や木工、草木染めなどのモノ作りを始めた例は豊富にありますが、それだけで食べていける人は多くありません。とくに移住して数年間は、作品の研究や販路の開拓に時間を取られるので、収入に結びつきにくいのです。土木作業など副収入を得るためのアルバイトが本業になってしまうケースもあるので、生活設計は慎重に立てるべきです。農村では2000万円前後の予算で農家物件を取得したり、広い土地に住居と工房を建てることも可能なので、大量の材木を使う家具職人、薪窯を使う陶芸家には有利です。問題は販路ですが、宅配便を利用したり、都会で定期的に個展を開くといった工夫が求められます。


●定住準備派・・・・田舎に定住したくても仕事の都合などですぐにできない、ならば定年まで通ってその準備期間にしようというライフスタイル。老後の田舎暮らしとともに、現在の田舎暮らしの主流となっています。とりあえずはセカンドハウスを建てることになりますが、近年は都会は賃貸、田舎は所有というケースも増えてきました。定住準備派には二つのメリットがあります。一つは、都会の仕事を継続するためローンが組みやすいこと。もう一つは、田舎を知るための準備期間を設けられること。農村で徐々に人脈を広げていけば、スムーズに定住へ移行できます。田舎の実像は住んでみないとわからないものですが、農村の知識が不足している人は不安が大きい。その意味で、現実的な方法と言えるのです。なお、セカンドハウスでは山奥の傾斜地でもよかったが、定住したら冬道で苦労した、上り下りがつらい、という失敗例がけっこうあります。将来を見据えて土地選びをすることが大切です。


出典:  田舎暮らしライター 山本和典